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税務

会社設立直後の税務手続の解説

会社設立後に行う税務関係の手続きについては、下記の区分により、それぞれの書類を税務署及び地方公共団体に提出します。

[1] 税務署に提出する書類

種類 内容 提出期限
法人設立届出書 代表者氏名・住所のほか、事業目的や事業開始年月日などを記入します。

添付書類・・・①定款の写し等、②設立時貸借対照表、③株主名簿
会社設立後2ヶ月以内
青色申告の承認申請書 法人税の申告を青色申告により提出をする場合に提出します。
青色申告には欠損金の繰越控除、特別償却などの様々なメリットがあります。
設立登記日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日までに提出
給与支払事務所等の開設届出書 法人が役員や従業員に給与の支払いを行うこととなった場合は源泉徴収の納税にために届出が必要となります。 給与支払事務所の開設日から1ヶ月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 常時10人未満の従業員に対して給与等の支払をする場合には事務負担を軽減するため1月から6月と7月から12月のそれぞれ半年の期間ごとに源泉税を納税するための手続きを行います。
納期限は7月10日と翌年1月20日です。
申請書を提出した日の属する月の翌月分の源泉税から適用されます。
棚卸資産の評価方法の届出書(任意) 棚卸資産の評価方法を個別法、先入先出法・最終仕入原価法などの評価方法から、さらに原価法なのか低価法なのか評価するのかを届け出るための書類です。未提出の場合は「最終仕入原価法」で評価を行います。 最初の確定申告の提出期限
減価償却資産の償却方法の届出書(任意) 減価償却資産の評価方法について定額法や定率法を任意に選択する場合に提出します。
選択しなかった場合には「定率法」により減価償却を行います。
ただし、建物、建物附属設備、無形資産は定額法のみの償却方法によります。
最初の確定申告の提出期限

[2] 都道府県及び市町村に提出する書類

  内容 提出期限
法人設立届出書
  • ①道府県税(法人事業税)については、本店所在地の道府県の県税事務所の法人事業税担当
  • ②市町村税については各市町村の法人市民税課
    *東京都特別区は都税事務所のみ
添付書類・・・①定款の写し等、登記事項証明書の写し
提出期限の定めはありますが、各自治体によって異なるため確認が必要
*東京都の場合は事業開始日から15日以内

[3] 消費税の課税事業者の判定と各種届出

(1)消費税関係の書類

消費税について、会社を設立後2事業年度は免税事業者となるので消費税関係の届出を失念するケースが多く見受けられています。
消費税は「基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者」が消費税の課税事業者となり、その事業年度終了の日から2ヶ月以内に法人税の申告等と共に申告納税を行います。

この場合の「基準期間」とは法人の場合は原則として前々事業年度をいいますので設立第3期に初めて基準期間(設立第1期)を有することとなります。また基準期間が1年未満である場合には1年に換算して1,000万円超かどうかを判定しますので、第1期が1ヶ月でもその期間の売上高が84万円の場合には、12倍すると1,000万円超となり、第3期目に課税事業者となります。
また「基準期間の課税売上高が1000万円以下」でも次のケースでは課税事業者となるので留意してください。

  • ① 設立時の資本金が1,000万円以上の法人(消費税の新設法人)または課税売上が5億円を超える会社の子会社である新設法人は設立後第2期目までの事業年度は課税事業者になります。
  • ② 特定期間の課税売上高が原則として1,000万円超の法人
    特定期間とは原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6ヵ月の期間をいい、この期間の課税売上が1,000万円を超えているかどうかで判定します。但し事務負担を考慮し、課税売上高に代えて特定期間中に支払った給与等の金額で判定することもできます。

特定期間の課税売上高が1,000万円超となった場合には、その事業年度(設立第1期目の特定期間で該当した場合第2期目)から消費税の課税事業者となります。
よって消費税の課税事業者の判定は「基準期間」と「特定期間」のいずれかが要件に該当した場合に課税事業者となります。

(2)消費税の各種届出書類

① 消費税の課税事業者選択の届出書

設立第1期目に設備投資が多額にあった場合や、輸出業者のように売上げに係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額が多く、経常的に還付が生じる事業者については、免税事業者であっても課税事業者を選択することによって、消費税の還付を受けることができます。
消費税課税事業者選択届出書」の提出期限は原則として課税事業者となろうとする課税期間の開始の日の前日までですが、新設法人は、設立第1期目の事業年度末日までに提出すれば、その課税期間から課税事業者となります。

② 消費税の簡易課税選択届出書

消費税の申告を簡易課税により行いたい場合には「消費税の簡易課税選択の届出書」を適用しようとする課税期間の開始の日の前日までに提出しなければなりませんが、新設法人は、設立第1期の事業年度末日までに提出すれば簡易課税を選択することが出来ます。
なお、一度簡易課税を選択した場合には2年間は簡易課税を継続しなければならないため、翌事業年度に設備投資などで還付申告を予定している場合には適用開始期間を慎重に選ぶ必要があります。

[4] 申告書の提出期限を延長しようとする場合

(1)概要

法人税や法人事業税・道府県民税、法人市民税は各事業年度終了の日から2ヶ月以内に申告書を提出してそれぞれの税額を納付することを原則としています。
しかし、定款等又は特別の事情があることにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にであったり、会計監査人の監査を置いている場合などは、申告期限をそれぞれ1ヶ月延長することができます。
ただし、消費税の申告についてはこの申告期限延長の特例は認められていません。

(2)提出書類・提出期限

法人税、地方税とも「申告期限の延長の特例の申請書」を最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までに提出します。

[5] 法人設立後の会計処理

設立第1期目の会計期間(事業年度)は法人設立の日(設立登記申請書の提出の日)から定款で定めた会計期間末日までとなります。
また、設立前に要した設立のための費用や、設立後開業までに要した開業準備のための費用はそれぞれ創立費や開業費(いずれも会社法上の繰延資産)として資産に計上し、その事業年度開始から5年以内で任意に償却が認められています。

貝沼 稔

貝沼 稔

税理士

昭和59年、専修大学商学部卒業。平成元年に税理士登録。東京税理士会小石川支部副支部長、日本税務会計学会国際部門委員。

主な著書

「知っておきたい財産を取り巻く税金」中央経済社刊
「同族会社の法務と税務」(共著) 第一法規出版刊
「顧問税理士なら答えて! 個人の国際課税Q&A」(共著)中央経済社刊